感覚で治す整体から卒業──胸椎・肋骨・呼吸から頭痛を読み解く“再現性のある施術”へ
「その場では軽くなるのに、翌日には頭痛が戻ってしまう。」
頭痛に悩む方を日々施術していると、こんなケースに何度も出会います。これは目の前の筋肉を一時的に緩めているだけで、 頭痛の本当の原因である“構造の偏り”に届いていないときに起こりやすい現象です。
この記事では、整体師・手技療法家向けに、感覚頼みの頭痛施術から一歩進んで、 胸椎・肋骨・呼吸・重心を含めて頭痛を評価する「理論と再現性」のあるアプローチについて解説します。
「気持ちよさ」と「再現性」はまったくの別物
マッサージ的なアプローチで心地よさを作ることはできます。
しかし、その気持ちよさはあくまで一時的な神経反応であり、頭痛の原因となる身体構造の歪みまでは変えきれないことが多いです。
よくあるパターンは、
- 筋肉を緩める → 施術直後は楽になる
- 骨格バランスが変わっていない → 翌日には頭痛が戻る
という流れです。
「気持ちいい施術」と「再現性のある頭痛治療」は別物だと理解しておくことが、改善率を上げる第一歩になります。
頭痛の本当の原因は“首や肩だけ”ではない
整体の現場では「首が硬いから頭痛」「肩こりが原因」という説明をされることも多いですが、実際にはもっと複雑です。 頭痛は、全身の構造バランスの崩れが積み重なった結果として出ている症状です。
身体均整法の考え方では、前後・左右・回旋バランスの崩れが、神経・血流・体液のリズムを乱し、頭部に負担を集中させるとされています。 例えば次のような要素は、すべて頭痛の背景としてよく見られます。
- 首の角度のわずかなズレ
- 食いしばりによる顎の緊張
- 肩の巻き込み・猫背姿勢
- 胸椎6・7の硬さと背中の張り
- 肋骨がしなやかに動かない浅い呼吸
- つま先重心・足趾の浮き
首や後頭部だけを触っていると、一時的に楽になっても、これらの構造的なズレが残っている限り、頭痛は繰り返されやすくなります。
胸椎6・7と肋骨・呼吸が頭痛に関与する理由
頭痛施術を難しくしているのは、原因が首そのものではなく、胸椎6・7と肋骨、そして呼吸にあるケースが多いことです。
胸椎6・7は横隔膜や自律神経と関わりが深く、ここがロックしてくると、
- 深く息を吸えない・吐ききれない
- みぞおちの奥が詰まるような感覚がある
- 背中の真ん中あたりが常に張っている
- 肩甲骨が外に広がり、首・肩に負担が集中する
といった状態になりやすく、結果として後頭部の緊張やこめかみの痛み、目の奥の重さといった頭痛に繋がります。
臨床上、胸椎・肋骨の動きを整えたあとに首を触ると、驚くほど軽い刺激で変化が出ることも少なくありません。 これは「首が原因」ではなく、「胸椎〜胸郭の問題に首が巻き込まれていた」パターンと言えます。
戻りのない頭痛施術へ──評価 → 操作 → 検証 の3ステップ
感覚だけに頼らず、再現性のある頭痛整体を組み立てるには、AUBEが重視している 「評価 → 操作 → 検証」の3ステップが欠かせません。
1.評価(頭痛の原因を構造から見立てる)
いきなり首を触るのではなく、まずは全身の情報を集めます。
- 呼吸は浅いか、吐ききれているか
- 立位でつま先重心になっていないか
- 肩甲骨が外側に開きすぎていないか
- 胸椎6・7周辺に強い張りや硬さがないか
- 肋骨の前側・側方・背部のどこが最も動かないか
こうした評価を通して、「頭痛の背景にある構造の歪み」を見立てていきます。
2.操作(胸椎・肋骨・重心を整える)
評価で得た情報をもとに、どの順番で・どこから整えるかを決めます。 頭痛施術では、首だけで完結させるのではなく、
- 足部〜骨盤を整え、重心を安定させる
- 肋骨の可動性を引き出し、呼吸の偏りを減らす
- 胸椎6・7の伸展・回旋を改善して胸郭をしなやかにする
- そのうえで頚部・後頭部を軽く整える
といった流れで全体から頭部へアプローチすることで、戻りの少ない頭痛施術に近づきます。
3.検証(その場で変化を確認し、施術の正しさを確かめる)
操作のあとに必ず、
- 呼吸の深さは変わったか
- 立位での重心は変化したか
- 首の可動域・自由度は増えたか
- 頭痛の強さや場所はどう変わったか
を確認します。
この「検証までをセットにした施術」を繰り返すことで、
「なぜこの頭痛にはこのアプローチが効いたのか」という判断材料が蓄積され、再現性の高い整体が組み立てられていきます。
感覚から論理へ──説明できる頭痛施術を目指して
なんとなく効いた、たまたま楽になった──。
そうした施術から卒業し、「なぜ効いたのか」を説明できる頭痛治療へシフトしていくことが、これからの整体には求められています。
身体均整法をベースにした頭痛操法AUBEの考え方は、 胸椎・肋骨・呼吸・重心といった構造の連動から頭痛を読み解き、 評価 → 操作 → 検証をセットで学ぶことに重きを置いています。
癒しだけでなく、結果を再現できる整体へ。
頭痛の原因を首や肩だけに限定せず、全身の構造とバランスから見立てていくことで、
戻りの少ない頭痛施術に一歩ずつ近づいていけます。
